現在は医療ではここ数年で大きく変わってきている部分があります。それは在宅で治療を進めていく事です。
十数年前は病気をしたら入院して治すが当たり前でしたが、現在は必要な治療が済んだら在宅に戻りで治療を進めるのが一般的になっています。
現代の医療に合わせた家での生活をしながら生活の難しさを克服する、【訪問リハビリテーション】が多くなっています。
そこで今回は訪問リハビリの導入として、どのような方が使えてどのような介入を行うのかを紹介していきます。

訪問リハビリとは?
まずは訪問リハビリとは何かを紹介していきます。
訪問リハビリとは、在宅で生活を行いながらリハビリスタッフが直接訪問してリハビリを行うものになります。
対応保険には【医療保険】・【介護保険】の2種類があり条件により使用できます。しかし2種類を同時に使用する事は出来ません。対応保険の選び方は後程紹介します。
介入環境としては”実際に生活されている環境でのリハビリを行う”事になります。
在宅に居る間に使用できるリハビリは他にもありますが、実際の生活環境でリハビリを行えるのは”訪問リハビリの強み”になります。そのため身体機能の向上だけでなく、福祉用具の選定や環境調整なども同時に行えて、安楽な生活環境を調整する事が可能です。
契約する際に、どの療法士が何日来て、何単位するかの調整を行います。こちらの詳しい内容も後程紹介していきます。
訪問リハビリの対象になるには?
続いて、訪問リハビリの対象を詳しく紹介していきます。
訪問リハビリは保険診療になるため、利用するための様々な基準があります。(自費診療での介入も可能ではありますが、費用が多くかかるため基本的には保険診療を多く使用されます。)
そこで”医療保険”と”介護保険”の条件をそれぞれ紹介をしていきます。
医療保険で訪問リハビリをするには?
医療保険では対象者・対象疾患・実施基準・特例を詳しく紹介していきます。
対象者
- 年齢:原則65歳未満(ただし65歳以上も介護保険非該当者が利用可能)
- 保険:国民健康保険・健康保険・後期高齢者医療制度など
- 状態:通院が困難な状態で、医学的にリハビリが必要と医師が判断
- 医師の指示:医師の訪問診療 or 通院診察が継続的に行われていること(3か月に1回以上)
- 指示書:医師による「リハビリテーション指示書」の発行(有効期限90日間)
医療保険を使用する場合は、介護保険を持っている人は基本使えません。介護保険を持っている人は例外を除いて介護保険が優先されてしまいます。
また医療保険を使用する際には、指示書などの有効期限などもあるため、3カ月に1度以上は医師の受診をして書類を作成してもらう必要があります。
対象疾患
対応する疾患は「疾患別リハビリテーション」の分類に当てはまるものであれば介入可能です。
疾患別リハビリテーションには、脳血管疾患・運動器・呼吸器・心大血管・廃用・がんの6種類に細分化されます。
疾患の名前では脳梗塞や骨折、心不全、長期入院での機能低下でも介入する事が一応可能です。しかしここで注意が要るのは、「状態」だけでは当てはまらない可能性があります。この項目は膨大になるため詳しくは”疾患別リハビリテーションの算定病名の詳細と注意点”で紹介していきます。
また疾患別リハビリテーションは6種類の分類ごとに対応できる日数が限られています。
- 脳血管疾患:180日以内
- 運動器:150日以内
- 呼吸器:90日以内
- 心大血管:150日以内
- 廃用:120日
- がん:上限日数なし
回復に長期間時間がかかると判断されているものが、介入できる期間も長くなっています。こちらは上限のため主治医が不要と判断されると早い期間で終了する事もあります。
実施基準
訪問リハビリを実施する基準ですが、
対応するスタッフが理学療法士(通称PT)、作業療法士(通称OT)、言語聴覚士(通称ST)の3種類の職が介入できます。
また1回の介入は20分で計算されます。(法律等でも1回20分を1単位と表しています。)なので一日に40分まとめて行うと2単位実施したという計算になります。
そして1週間で介入できるのは基本6単位まで(1週間で120分)になっています。7単位以上も可能ではありますが、医師が必要性を詳細に記載しないと許可が下りません。なので必要度が高いと判断された場合はもう少し多くリハビリを行う事も可能ではあります。
また”対象者”でも話しましたが、訪問リハビリを行うには医師のリハビリ指示書が必ず必要になります。
特例
ここまでは基本的な医療保険の内容を説明してきました。
しかし医療保険でも特例として介入できる期限が延長する事があります。
- 認知症・神経難病(パーキンソン病など)
- 重度心不全、肺疾患、廃用症候群の慢性的な継続
- がんによるADL低下への継続的な対応
- 退院直後や急激な生活環境変化への対応
上記のような状態であれば、”医学的理由”と”機能評価(FIMやB.Iなどの評価)”をもとに医師の記載した指示書が必要です。
小まとめ
医療保険での具体的に対象者などを紹介しました。
医療保険を使う際に重要な事は介護保険を持っていない人で疾患になり医師が必要と判断する事が大切になります。
医師が必要なしと判断した場合や該当する疾患が無い場合は、こちらがどれだけ言っても医療保険での介入は行えません。
介護保険で訪問リハビリをするには?
続いては、介護保険では対象者・対象疾患・訪問頻度や単位数・実施基準・特例を詳しく紹介していきます。
対象者
- 要支援1以上の認定を受けた人
- 通所が困難な場合や在宅生活を維持するために定期的なリハビリが必要な人
介護保険の対象者になるには、医療保険に比べると項目数なども少なく比較的簡単受ける事が可能です。
対象疾患
対象疾患はありません。
上記の要件を満たしていたら、加齢で歩きにくくなったや忘れっぽくなったでもなんでも大丈夫です。
そのため幅広い方が使いやすくなっています。
訪問頻度や単位数
こちらも1回20分が一区切りになります。しかし医療保険と違い単位数は約253単位となります。
単位数が約253単位なのは地域によって点数が異なるため平均的な数値を出しています。
頻度に関しては、月に何度でも利用が可能です。しかし介護保険の利用には「支給限度基準額」内で納める必要があります。要介護2の人の支給限度基準額が月約19600単位になるため、リハビリだけを使ったとしても月に7~8回(1回20分)が限度になります。
実施基準
介護保険での実施基準は、医療保険での実施基準と大きな差はありません。
原則自宅で行い、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士が対応します。またリハビリ介入にあたり医師の指示書が必要という事です。
そのため利用者の手間はさほどありません。
しかし、医療保険との大きな違いはリハビリが必要と判断する人が医師ではなくケアマネージャーになります。
そのため介護保険を持っている方が「訪問リハビリ使いたい!」となった場合は、かかりつけ医ではなくまずケアマネージャーに伝えてケアプランを作成してもらう必要があります。
このケアプランなどは別の講座でお伝えしますが、こちらのケアプランを作成してからでないと上記の項目がクリアしていても訪問リハビリが行う事が出来ません。
またケアマネージャーが良かれと思って、訪問リハビリを無くす(追加している)事や訪問リハビリ事業所に担当スタッフの指定などを行っている事も実際あるようです。
もし利用される方は、しっかり自身の思いや意見をしっかり伝えていく事が必要です。
小まとめ
こちらは基準などは簡単になっており、ケアマネージャーにお願いする事で使用できるなどの手軽になっています。
しかしこれまで健康に過ごされていて介護保険を取っていなかった方には、介護保険の認定を取ってから使用する事になるため時間を要してしまいます。
その場合は医療保険で行い、介護認定取得後に介護保険に切り替えを行うなどの使い方をする事も可能です。
医療保険・介護保険での特例
ここまで各保険での対象などを紹介してきました。
しかしこれまで紹介した内容でも、特例が存在します。
それを知っているとお得に対応する事や長くリハビリを行う事なども可能です。
特例の内容は?
今まで説明する中で、介護保険を持っている人は医療保険での訪問リハビリは出来ないと説明しました。
これは「医療・介護の優先ルール」といいます。
このルールは介護保険が優先適用される原則になります。そのため在宅サービスを使う際は介護保険を持っている場合は優先して利用する事が基本になります。
しかしここで【特例】が出てきます。
それは「厚生労働省が定める『特定疾病』または『指定難病』に該当&特定の条件を満たすと医療保険を使用可能」
というルールがあります。
特定の条件とは、例えば末期がんで疼痛緩和・緩和ケア目的の場合には介護保険を持っていても医療保険が使用できます。しかし余命宣告などがされていないがん患者は介護認定を取っていた場合は介護保険利用になります。
また特定疾病や指定難病は医師の判断により医療保険が使用することが可能になります。
ここで多くの人が疑問になることですが
「なんで医療保険が使えると良いの?」ということです。
この疑問にはお金(自己負担の支払い金額)が大きく関係します。
難病や特定疾病の方は「特定医療費制度」・一般医療費では「高額療養費制度」などにより費用の上限を下げる事ができます。
例えば上記で挙げた要介護2の方が訪問リハビリを利用できるのはどんだけ頑張ってもひと月で7~8回が限度です。そして更に増やすには自費診療になります。こちらは場所ごとに費用が違いますが一回で3000円なんて値段になる事も普通にあります。
しかし上記の制度を利用した医療保険対象者は、週に6回(月に24回程度)した場合でも住民税非課税でひと月に0~2500円・一般的所得世帯でも月5000円などで利用できます。
そのため費用を押さえて多くのサービスを受ける事が出来るようになります。
そのためにこの特例が使用されています。
まとめ
ここでは医療保険と介護保険の各対象者・対象疾患・訪問頻度や単位数・実施基準・特例を紹介しました。
基本的には要支援・要介護などの認定を持っていない方が医療保険での訪問リハビリを受ける事ができます。
また介護保険でも同じ内容を受けれますが、各介護認定により上限が決まっており決められた範囲内で様々な調整を行う必要があります。
また医療・介護の優先ルールの特例も紹介しました。こちらは自己負担額を減らして多くのサービスを利用する事が可能になるため、対象の人には必要ならぜひ使ってもらいたい制度です。
ぜひ皆さんも少しでも知って、適切な利用をしてみてください。
訪問リハビリを在宅環境で実際にリハビリが出来る少ない機会になります。
参照記事
厚生労働省 介護保険制度の概要 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/gaiyo/index.html
厚生労働省 健康・医療>医療保険
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